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ブラジルの牛肉生産と消費について
牛肉は世界で最も消費されている食肉であり、ウルグアイ、アルゼンチンに次ぐ牛肉消費大国であるブラジルは、人気のシュラスコ(ブラジル風バーベキュー)を始め、多くの人の食卓に牛肉が登場している。サンパウロ大学農学部の応用経済研究所(CEPEA)の調査によると、ブラジルでの牛肉の消費量は過去10年間で14%増加している。牛肉消費量の伸びの理由としては、鶏肉の値上げ、人口の増加などがあげられ、また2019年では一人あたりの牛肉消費量は37.1kgで、日本と比較して約6倍である。
ブラジルは牛肉の消費だけでなく生産量でも畜産大国であり、現在の飼養されている肉牛はおよそ2億1500万頭で、その中の80%が国内で消費されている。
2000年代、飼料作物(大豆やトウモロコシ)の生産が急増し、国民の所得も上昇した影響でブラジルの牛肉生産は増加傾向となった。近年では中国からの需要が増え生産量を拡大させており,2019 年におけるブラジルの牛肉生産量は 1,022 万トンと米国に次いで世界第2位の数字を記録している。これは生産技術への投資、及び、改新によって生産性が上がった結果と言える。地域別の飼養割合では伝統的な生産地である南部からその他の地域へ移行し、南東部から草地価格の安い中西部や北部へ移動し、拡大してきている。
今までブラジルの肉生産者の間で最も飼育されていたのはネローレ種だったが、高品質を求めアンガス種やサシの多い和牛に注目が集まってきており、アンガス牛を使用したハンバーガー専門店や和牛を味わえる高級レストランが増えつつある。
国内需要が高まっていく中、輸出でも2019年の牛肉輸出が金額、量ともに過去最高を記録した。輸出額は約745万ドル(前年比15.5%増)、輸出量は183万トン(前年12.4%増)となった。この背景には、主な輸出先である中国 (42.3%) での需要の急増がある。中国に次いで香港 15.73%、エジプト6.63%、その他にもアラブ首長国連部(UAE)やロシアへの輸出も増加した。また、ASF(アフリカ豚熱)、鳥インフルエンザなどの病気が未発生であるという優位性により「食品の安全保障」を世界に輸出できる数少ないサプライヤーとなっている。
2021年のブラジル国内の牛肉消費量は2.7%増加すると予測されており、輸出では中国以外にもヨーロッパでの新型コロナウィルスのワクチン接種開始及び世界経済の回復に伴って、新市場向け輸出が期待されている。